第70話:さまよい夢路〜数多のまどろみ〜
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焼けた線路。
一直線に続く。
ゆめ…。
行く手に現れては。
背後へ消えてゆく。
数え切れないほど。たくさん。
夢。夢。夢。…また夢。
それを越え続けて。
少しづつではあるけれど。
求めるものへと近づいて…。

私は歩き続けます。



ブランコの傍に、幼い少年と少女。
口喧嘩をしています。
気にした風もなく。
プリズマが2人の間を通り過ぎました。
子供達はプリズマに気づかず、喧嘩を続けています。
「この2人は、過去の体験。
 どちらの夢かはわからないけれど。
 とても幸せな夢だね…」
寂しそうな顔で。
プリズマはそっと呟きました。

これは、思い出の夢。


細長い窓。
誰もいない部屋。
揺り椅子が主を待って。佇んでいます。
でも、どこか遠いところに人の気配。
誰もいないということは、つまり。
ここの住人に意識があるということ。
起きているということ。
眠ればまた、この場所を思い出して。
何度でも帰って来るのでしょう。

これは、空っぽの夢。


全身を包む液体。
透き通った青。
踵がなくなったみたいな浮遊感。
リズムよく押し流される、私の体。
揺れている海草の森。
巨大な塔のように聳え立つ、鮮やかな色彩の珊瑚。
きらきらと輝きながら、たくさんの魚が泳ぎ回っています。
広大な空間を無尽に駆け巡る、その姿。
とても綺麗で、そして楽しそうです。
「ここは誰の夢?」
私がそう訊くと。プリズマは周囲の水を掻き混ぜて答えました。
「カイルが話してくれたよ。
 遠い、遠い場所にある。『透き通る海』のこと。
 すごく綺麗な海なんだけど。
 海底から噴き出す酸素が濃すぎるんだ。…だから、魚も海草も住めない」
私が首を傾けていると、彼はこう付け加えました。
「海も、夢を見るよ」

これは、憧れの夢。


大木の陰。
木漏れ日の中で。
見詰め合う男女。
二人とも微笑んでいます。
愛する者。
愛される者。
愛し合う者達。
その場を去りながら、私はプリズマに話しかけました。
「『愛』ってなに?」
彼は困った顔をして、遠くを見つめました。
「僕は人を好きになったことがないんだ。
 でも、きっと。複雑で難しいものなんだと思う」
…私の頭にも、きっと難しすぎるに違いありません。
残念です。

これは、愛の夢。


BGM:千年桜
BoundlessField



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