第54話:闇への帰還
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いつの間にか、世界は元の姿を取り戻していました。
私は舞台の上にいて。
空を、広場を、そして黒と緑のものを見つめている。
パンタグリュエルの殺戮を免れた、生き残りの人々が私を見上げているのがわかりました。
「そこをどけ」
静かに響く、闇の声。
無言で、それに抗する誰か。
小さな背に私を隠そうと。
いっぱいに両手を広げて。
細い肩を恐怖に震わせながらも。
敢然と。
私を庇い、立つ。
彼女は……確か…マレリィ。
「…少女よ。その命、無駄に消費するものではない。
 邪魔をしなければ、お前からは何も奪わん」
黒と緑のものが、感情のない声で言いました。
「…奪わせない」
マレリィの返答。断固とした意思を込めて。
「絶対に」
クランという娘を守り抜く。
それが彼女の決定。
この世の何者も、それを曲げさせることはできない。
それが、マレリィという少女。
でも。

邪魔だ。

背中に強い衝撃を受けて。
少女の小さな体は、前方に倒れました。
悲鳴と同時に足を踏み外して。
舞台下へ向けて、階段を転げ落ちてゆく。
…少女を突き落としたもの。
それは私の手。
ぎしり、と靴の下で軋みあがる音。
階段を降りてゆく、二本の足。
それも、私のもの。
黒と緑のものを目指して。
一段、また一段と。
降りてゆく。
迎え入れる準備はできています。
緑光に包まれた、深く暗い闇。あの場所が。
私の還る場所。

私は簒奪者。

名前は、ガルガンチュア。




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