第47話:漠旅の歌(ばくりょのうた)〜クランの言葉〜
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鳴り響く拍手と喝采。
ばらばらにお辞儀シテ。
十人娘が舞台を降りました。
劇のタイトルは「完璧な騎士」。
でも、出てきたのは十人のお姫様だけでした。
…ざわめきが静まっテゆきます。
次は、私達の出番。
マレリィが私の手を引いてくれます。
広がったズボンの裾を引っ掛けないよう、片手で引き上げながら、私は階段に足を掛けました。
マレリィが見つけてきてくれたこの衣類は、私には少し大きすぎるようです。
舞台に上がった私達を。観衆が拍手で迎えました。
すごい熱気。これは、人々の。燃え猛る想い。
心の焦熱。
舞台袖のスピーカーから、「ぶつん」という重い音。
レコードが回り、カスれた音色が風に混ざってゆきます。
ありふれた民謡。
誰もガ知っている。
とても、ポピュラーな曲。
歓声が収まります。
大きく息を吸い込んで。
私の第一声が放たれました。
折り重なるように、マレリィの声。
二つの声が。
高く。低く。うねりながら、支えあう。
うねりは大きな波となって。
芯の通ったハーモニーに。
深く。
深く。
私達は今、一つの楽器です。
一つの…。
一つの…。
一つの…。
ヒトツのもの。

がきん。

あの音。
頭の中で。
砕ける。

砕けて。
流れ出ようとする。

空。風。この場所は。舞台。
驚いて、私を見つめるマレリィ。
きょとんとした顔の人々。観衆。
色んなものが、急激に。
遠くなる。色が霞む。

決壊。
そして。
溢れ出す。
私のコトバ。


   空に架かる紅い月
   砕け 割れて 叫ぶ
   廃棄される青い魂
   どこまでも逝く

   異常 焦燥 後頭葉

   クラい手の目隠しに
   まだ 先の見えない
   あからずのみち

   私を治してください



最後の音が流れテ。
スピーカーが沈黙しました。
曲はこれで終わり。
でも、私の唄は続いている。
自由に音を砕いて。
組み立てて。
どこまでも広げてゆく。
次々に生まれる音。
紡ぎ出される、私の言葉。


   疾駆する 闇の中
   怯え 寄り添い 此処に
   軋み上がる列車の吐息
   どこまでもゆく

   思考 体温 絶縁体

   私の隣に座っている
   小さな宇宙に辿り着く
   あからずのみち

   私を見ていてください

   温かなものを知らなくて
   忘却だけが残っていて
   この世界は有限で
   私だけが永遠で
  
   だけど 生きてゆけます

   あなたが 此処にいるから

   至上 閃光 引力線

   風を渡り 空に溶けよう
   水を砕き 海に混じろう
   ふたりが終わる その場所まで
   どこまでも どこまでも

   あなたは 私の 
   大切な半身




BGM:水と風の交わる処
Innerstudio


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