第45話:祭(サイ)
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破裂音。
蒼空に弾けル。
白。黄。緑。…桃色。
色とりどりの、煙花火。
祭りが始まりました。
広場に溢れるヒトの波。
今日は街中の人間がココにいます。
ぱっと見たところ、街のヒトが全員揃っても、その数は百人に満たない。
それでも、普段のこの街からは考えられない、異様な活気がそこを包んでいました。
広場を囲んで立ち並ぶ屋台の群れ。
肉の焼ける、香ばしい匂い。
空に呑まれる白煙。
ヨロコビの声。驚キの声。語り合うコエ。
男の人も、女の人も。
全ての人が笑顔を見せて、乾杯の声を上げています。
そこかしこから流れ出す、それぞれの音楽。
陽気なギター奏者。
打ち鳴らされる太鼓の音…。
やぐらの傍に、大きなピアノが見えます。
あそこはダンス会場です。
たくさんの男女が踊って…。
とても楽シそう。
やぐらの向こう側には、太い木材を幾重にも重ねた舞台が組まれています。
この上で、次々に出し物が披露されるのです。
私達が唄うのもここに違いありません。
今、舞台の上にいるのは紫色の服を着た人。
手にした帽子から次々に鳩が飛び出してきます。
鳩は7色の羽を撒いて、宙空で姿を消しました。
わあっと、人々が湧きます。
拍手と喝采の嵐。
凄イです。
「クラン、あれを見て!」
マレリィが私の袖を引きました。
彼女の視線の先。
赤い屋根の屋台。
三脚の上に。大きな、とても立派な木製の板。
紙芝居屋です。
顎髭を長く伸ばした男の人が、大声を張り上げています。
「さあさあ、足を止めて!
 誰もが知ってる、あのお話。それでも聴きたい、あのお話。
 楽しいお話も、恐ろしいお話も。
 お望みとあらば聴かせましょう。
 声嗄れ果つるまで語りましょう」
男の人は板を勢いよく叩きました。
ぱっと絵が現れました。
「まずは、あのお話から!
 黒い雲と、一人の乞食。
 古い古い昔語り。
 物語の名は『闇の王』。
 いざや、いざや!」


BGM:水と風の交わる処
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