第38話:語る街
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私ヲ包むもの。
語り合う海鳥の声。
波の音。潮の香り。砂混じりの大地。
浜風が容赦なく髪を梳いて。

私の瞳に映ルもの。
半ばまで崩れた堤防。
寄り添い、支えあう建物の群れ。
入り組んだ小路。
蹂躙者たる草木。
街というよりは小さな村落。
ひどく寂しげな。
ココが、『語る町』。


もう何処へも。
行く気になれませんでした。
私はひどく空ろなものになっていて。
行くことも。逝くことも。
諦めて。
でも。
小さな掌。それが私の手を包み込んで。
そっと私を導きました。
マレリィ。
私なんて放っておいてもいいのに。
きっと、私は生きていくから。
全てを置き去りにして。
私だけは生き続けるから。
だから、私のことも置いてゆけばよかったのに。


屹立する2本の石柱。長々と影を落として。
柱達が作る空間。
そこが、街の入り口でした。
柱の間を抜けル時。
遠くで声が聴こえました。
「遂に来たのだね。蜜柑色の髪を持つ娘」
声は、ずうっと遠く。街の奥から聴こえてきたようでした。
「誰ですか? どこにいるんですか?」
マレリィが大声で呼びかケました。
応えは、すぐ耳元で。
「しぃっ。…そう大声を出すものじゃない。ちゃんと聴こえておるよ」
振り向いた私達の目は、何も捉えませんでした。
「どこにいるんですか?」
マレリィが小さな声でもう一度尋ねました。
「ここに」
シンプルな答え。
「ここにいるとも。
 儂が『語る街』だ。
 …さあ、入りなさい!
 お前さん達は来るべくして来たのだから」


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