第36話:こわれゆく
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夢を見ていました。
俯いている、幼い女の子。
…泣いています。
悲しくて、寂しくて。
少女には、右腕がありませんでした。


目ヲ開いて、最初に見えたもの。
涙で溶けた、大きな瞳。
月光を浴びる、白い肌。
安堵の笑みを浮かべて。泣いてイル少女。
…誰だろう。
知っている子だったかな。
マレリィ…。
マレリィ・バードケージ。
うん…。たしか、そんな名前でした。
でも、どうして泣いているのでしょう。
ひょっとして、私のせいでしょうか。
「あなたはどうして泣いているんですか?」
私の問い。
何か間違っていたのでしょうか。
少女の顔が凍りつきました。
ぽたぽたと、私の頬を打つ。
涙の雫。

「クラン?…どうしたの?しっかりして…」
彼女は震える声でそう言いました。
私はその呼びかけに応える気がしませんでした。
いえ、応えてはいけないと思ったのです。
少女が私を抱き起こそうとしているのがわかりました。
どうしテそんなことをするのか。
それが理解できず、私は身をよじって抗いました。
放っておいて欲しい。
私のことをここに置いて、早く立ち去って欲しい。
その時、サックスブルーの何かが私の鼻先に触レました。
綺麗な色。とても綺麗な。
私はそれを手にとって、ぼうっと見つめました。
「クラン…クラン…」
少女が繰り返し、私の名前を口にしています。
ああ…そう、それが私のナマエだった。
…名前?
名前なんて、私に何の意味があるのでしょう。
大事な意味があった気もします。
でも。
もう、ワかりません。


BGM:とまどい
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