第31話:華焔(かえん)
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私と『彼女』。
同じ顔を持つ、二つの存在。その間に。
颯爽と立つ、パンタグリュエル。
私は、捻じ曲げられたはずの彼女の腕が、元の姿に戻っていることに気がつきました。
冷たい、石のような声でパンタグリュエルは宣言しました。
「ここは通しません」
決意に満ちた声音。
それを『彼女』は鼻で笑いました。
「さっさと逃げてれば長生きできたのに。
 ここにいるってことは、今度こそバラバラに分解して欲しいってこと?
 そうなの?ねえ?」
からかい、馬鹿にした口調。
「だったら望みどおりにしてあげてもいいよ?
 のこぎりで半分に切って、この海に捨ててあげ」
る。
という音は続きませんでした。
その代わりに。『彼女』の唇が。
金色の光を吐きました。
それは、ちろちろと明滅する黄金色の光。
こめかみから零れる、光。
頬を滑り落ちる、光。
首筋を伝う、光。
肌に影を落として。
「…何、これ?」
自らの異変に気がついて、『彼女』は目を瞬かせました。
途端に、瞳の中央が光に侵される。
瞼の裏側から溢れる光。そして、輝きは全身に。
小さく可憐な爪。その下から一斉に吹き出す、10の光。
腕や足の皮膚を突き抜けて、服の上を踊り狂う、光の帯。
がすん。
炭を砕いたような音がして、『彼女』の右腕が欠けました。
がすん。
今度は左肩が。
がすん。
戸惑う瞳が。
がすん。
焼かれ、削られ、消えてゆく。
焼滅します
パンタグリュエルが無感動に告げました。
…見えます。
『彼女』の体内を駆け巡る。美しい光の線が。
不思議な幾何学模様を描き。
『彼女』を内側から破壊してゆく。
これは、金色の火焔。
私と同じ顔が、キレイな黄金の華と化して。
がすん。

『彼女』の最期に、とても相応しい光景でした。


BGM:OVERMIND
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