第28話:湯
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山の深い深い場所。カイルが促した大岩の陰に。
それはありました。

滾々と。
止め処なく湧き出る。薄緑の湯。
岩を溶かし、穿ち、磨く。
そうして出来た、癒しの泉。
不思議な香りが鼻腔に広がって…。
私とマレリィは衣服を脱ぎ捨て、湯に体を沈めました。
体を包み込む、滑らかな液体。浸透する熱。
足の爪先から、頭の先まで。順番に力が抜けていく。
心地よい感覚。
水に体を浸すよりも、ずっと気持ちがよくて。
あたたかい。
それから隣を見て。
知りませんでした。
マレリィの肌が、こんなにも透き通っていたこと。
そして、こんなにも綺麗な色に変わること。
薄い皮膚を通して、サクラ色が鮮やかに。
体の中に花が詰まっているような。
マレリィは、とても綺麗です。

私がそれを口にすると、彼女は愉しそうに笑いました。
「クラン、自分を見てみて」
そう言われて、はじめて気がつきました。
私の手のひらも。
彼女と同じ、サクラ色に。
…幸せです。

不意に。眩暈がして。
目の前が真っ白になって。
意識が消えました。


…温泉は、素敵に気持ちがよいです。




  人物相関図(28話現在)



BGM:故郷
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