第22話:妖闘

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闇色の滲みから伸びる、輝く緑。その先端は円錐型の凶器と化して。
『彼女』の腹部を貫いたのでした。
勢いは止まらず、『彼女』の体を背後の壁に叩きつけて。
まるで、ピンで止めるように。壁ごと串刺しに。
人形のようにがくりとうなだれる『彼女』。
そして、恐ろしい静寂。
「信じられない…」
心底呆れたような声。それは、自分の体を見つめる、『彼女』のもの。
「クランを奪おうとしただけじゃなく、
 この私にまで手を上げるなんて…!
 正気なの!?」
言い終えると同時に。
『彼女』の腹部で砕け散る緑光
硝子の破片のように周囲に散ったそれは、きらきらと輝きながら宙に溶けてゆきます。
『彼女』が壁から離れました。
その胴体にはなんの異常も見られませんでした。
衣服にも穴ひとつできていません。
何事もなかったかのように体の前をひと払いした『彼女』。
その頭上に、さっと影が落ちました。
スカートをはためかせた、黒い怪鳥。
パンタグリュエル。
右腕を振りかぶりながら、真っ直ぐに舞い降りて。
交錯の瞬間。
ぼきり。
聞いたことの無い音がして。
パンタグリュエルの体が手前に吹き飛び、
まだ無事に残っていた机のひとつに激しく叩きつけられました。
乱れ散る髪の中、彼女の上半身が私達の方に大きくのけぞっているのが見えました。
すぐに起き上がったパンタグリュエル。でも、その右腕が。
おかしな方向に曲がっていました。
「これ以上、煩わせないでくれる?」
苛ついたように言う、『彼女』。
いつの間にか。その肩に。
奇妙なものが担がれていました。
いえ、それはごく平凡なもの。
だからこそ、あまりにも奇妙。
『彼女』の身長の半分ほどもある鋼鉄製のそれは、
巨大なペンチとしか見えませんでした。
でも、それが。パンタグリュエルの腕を捻じ曲げた、凶器。
軽々と片腕を振って、『彼女』がペンチを振り下ろしました。
凶器の先が地面を叩いて、鈍い音を響かせました。
「やみのおう…? …闇の王…ガルガンチュア…
 そっか…確か………奪うんだっけ…?」
ゆっくりと『彼女』が呟きました。
空いた方の手をこめかみに当てて、眉をひそめています。
何かを思い出すため、記憶を辿っているように見えました。
「あなたがどんな変質を遂げたのか…それは私の記憶には無いし、よくも知らないけど。
 どうだっていいよ。同じこと。
 邪魔するって言うんなら、あなたのことはここで始末していく。
 クランとは違う。虫けらのように惨めな死をあげる」
恐るべき宣告を放ち。『彼女』はガルガンチュアに向けて歩み出しました。
その間に立ちはだかる、パンタグリュエル。
無事な左腕を、いっぱいに伸ばして。
させません


BGM:OVERMIND
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