第21話:死をもたらすモノ

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がくがくと。揺れる世界。震える、私の体。
「助けにきたよ」
愛らしい笑顔を見せて、『彼女』が口を開きました。
「この前はごめんね。驚いたよね。
 まだ早かったのに。私、我慢できなかったから」
何を。言っているのでしょうか。
私に。私は。私の。
体が。心臓が。鼓動が。早すぎる。
私は何故。こんなにも『彼女』を畏れているのか。
「クラン…」
ぎゅうっと、背後から体が抱きしめられました。
マレリィ。
震えが止まりました。
マレリィの声が。私の名前が。
体に。生を与える。
「名前を手に入れたんだよね」
少し顔を曇らせて。『彼女』が言いました。
「…あなたは誰?」
ようやく絞り出した、私の問い。
「あなたに死を与えるもの」
澱みない答え。にっこりと微笑んで。
そして、一歩前へ。
「それが、私の目的」
また、一歩。
「あなたは、私に死を貰うための存在。そう決まってるの」
    …私は…
      ああ…そうなのでしょうか。
       『彼女』は私を殺すために。
         私は…『彼女』に殺されるために。
「この私ともあろうものが」
泥土のような、濁った声。
緑光が強さを増して。
闇の王、ガルガンチュア。
「なんという思い違いをしていたのか。
 …だが、こうしてお前から現れてくれたことは喜びだ。
 お初にお目にかかる。『第零格』よ」
すうっ、と『彼女』の視線が流れました。
初めて、私以外のものを見つめる。冷えた瞳。
「確かに。私はあなたが『第零格』と呼ぶもの。
 でも勘違いしないで。別にあなたに会いにきたわけじゃないのよ。
 こんなところに閉じこもって、こそこそと隠れてるあなたに興味なんかない。
 だけど…」
声が低く。『彼女』の気配。癇癪を押さえているような。
「腹は立ってるわね。
 私からクランを奪おうだなんて。大それたことを…
 私の許しもなくクランを殺す?そんなこと!
 あっちゃいけないんだから!!
感情が爆発する。その寸前。
走る。空間を裂いて。緑色の光が。
それはガルガンチュアの体から一直線に伸びた、触手状の光。
反撃を許さない、圧倒的な殺意のエネルギー。
驚くほどあっけなく。

それは、『彼女』の体を貫いていました。


BGM:ain_soph
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