第20話:光臨

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紫の糸が一斉にたわんで、絡み合いました。
再び帯状に変化したそれは、素早くパンタグリュエルの両の袖先に吸い込まれました。
直後、部屋の奥で光が炸裂しました。
初めにガルガンチュアが立っていた、その場所で。
光の中に何かがありました。
さっきまでは存在していなかったもの。
扉。
それは、イメージが。形になったもの。
そして開く。
ゆっくりと。

どくり。脈打つ血流。高まる鼓動。
込み上げる不安…胸騒ぎ。
違う、これは戦慄。

私は、あの向こうにあるものを知っている。
それが、ひどく危険なものであることを知っている。
それを、私は畏れている。

逃げないと。
あれが、姿を見せる前に。
逃げないと。
ここから、離れなくては。

でも、無情にも。
扉は、開いた。
何かが猛烈に吹き出して。
空気がびりびりと震えました。
目を開けていられなくて。瞼を下ろした一瞬。そして、もう一度。開く。
扉は消えていました。
そして、光も。

…逃げよう。

扉のあった場所に、何かがいました。

…逃げよう。

小柄な身体。
朗らかな笑顔。
鴉色の髪。

…逃げ…

そして、
私と同じ顔。

彼女』。


BGM:ain_soph
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