第6話:ハルキゲニア

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脆くなった足場が崩れ、私はよろめきました。
崩れた足場は無数の石ころに変わって、崖を転がり落ちていきました。
私は落としかけた手提げ灯をしっかりと持ち直し、
暗い足元を照らしながら、再び山道を歩き始めました。
道は岩壁を削り取って作られたもので、快適なものとは言えません。
急な上り坂では大雑把に彫られた階段が唯一の足場でしたが、
それも場所によっては風雨の浸食によって破壊され、無残な姿を晒していました。

山の中腹に差し掛かったところで、私は疲れ果てて座り込みました。
大きく張り出した岩の向こうに、真っ暗な西の空が見えています。
私は、はっと息を呑んで身を起こしました。
暗黒の空。そこにぼんやりと見える、巨大な何か。
町の人は「ハルキゲニア」と呼んでいます。
「まぼろし」という意味なのだそうです。
夜明けの瞬間。昼と夜の境界に。
私はそれを見つけました。
山よりも大きな何か。
リンの火が巨大な瞳からこぼれ、大気を朝に変えてゆきます。
私には何の関心も持たず。
それは、空に溶けてゆきました。

私はなんてちっぽけなんだろう。



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