第4話:半身少女

旅行鞄から、換えの衣類と靴がこぼれ出ました。
鞄を置いた拍子に留め金が外れてしまったようです。
ここは寂れた駅のホーム。
今まで乗っていた列車が、ゆっくりと去ってゆきます。
私がこぼれた物をかき集めていると、通りかかった少女が拾うのを手伝ってくれました。
彼女がかがんだ時、サックスブルーの髪が揺れて、その色を私の目に焼き付けました。
少女は左手で私の靴を膝に乗せ、丁寧に埃を払ってから私に手渡しました。

少女には、右腕がありませんでした。

なぜそうしようと思ったのか、私にもわかりません。
気がつくと、私は左手で自分の右腕を強くつかんでいました。
右腕は、すんなりと私の体を離れました。
驚く少女の右肩に、私の腕を押し付けて。
それから、私は左手で留め金を閉め直して鞄を持ち上げました。
その時にはもう、私の右腕は少女のものとなっていました。
立ち去ろうとする私の左手を。少女の右手が捉えました。
「待って」
彼女はそう言ったきり、言葉が見つからないようでした。
何度か口を開けては閉じ、彼女はようよう言いました。
「ありがとう。…ごめんね」
また生えてくるから構わないのだと言ったのですが。
信じてもらえませんでした。



BGM:木漏れ日
sound avenue


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